7・2 の憂鬱
ふと、体を揺らされたような感覚がして、目がさめた。
辺りは暗かったけれど、部屋の隅にあるスタンドライトが穏やかに照らしてくれていて、そのおかげで、床に散らばった衣服の形が分かってしまうほどには明るさがあった。
わたしは、大好きな匂いにくるまれていることに幸せを感じながら、ぐるっと顔を反対にまわした。
隣には、規則正しい寝息を響かせる恋人がいた。
眠っている顔まで整っていて、社内ばかりでなく取引先や関係各所の女性を魅了するのも、よく理解できるなと、改めて思った。
昼間、午後半休したわたしは、この部屋で戸倉さんと久々に再会できて、二人で濃厚な時間を過ごした。
しばらくして熱がおさまってくると、二人とも空腹であることに気がついて、順番にシャワーを浴びてから軽い食事をとった。
一人暮らしが長い戸倉さんは料理もなかなかの腕前で、小麦粉とベーキングパウダーを混ぜてササッとパンケーキを焼いてくれたのだ。
空港からの帰りに買ったというカットフルーツを乗せて、パリ土産の紅茶とスイス土産のチョコレートが一緒にテーブルに並んだ。
その華やかなメニューは、まるでおしゃれなカフェのようで、わたしは少しだけ浮かれた。