7・2 の憂鬱
一年前の誕生日とはまるきり違っている、わたしと戸倉さんの距離。
自分で決めてそうしたことなのに、”寂しさ” みたいなものが生まれてしまう。
わたしの誕生日を知っている同僚からは、ちょっとしたプレゼントだったり、おめでとうの言葉をもらったけれど、今日も、戸倉さんの姿は見かけなかった。
何を期待していたのかと、自嘲する気持ちを抱きながら、7月2日の業務を終えようとしたとき、デスクに戻ったわたしは、小さなペーパーバッグに気が付いた。
・・・・これって・・・
急いで中をのぞくと、そこには、茶色いリボンが掛けられた小さなボックスが入っていた。
そしてそのボックスには、去年、戸倉さんがわたしの誕生日を祝ってくれたイタリアンレストランの名前があったのだ。
・・・まさか、戸倉さんから?
ボックスにはカードの類いは付いてない。
わたしは、周りの同僚に気付かれないよう、こっそりと、ペーパーバッグの中を探った。
けれど、どこにも、贈り主が分かるようなものはなかった。
わたし宛なのか、受け取ってもいいのか、微かに躊躇っていると、それを見計らっていたようなタイミングで、わたしのスマホが震えだしたのだった。