7・2 の憂鬱




「え・・・?」

不意打ちにビクッとしながらもスマホを手に取ると、新着メールだった。


・・・戸倉さんからだ。


〔デスクの紙袋は僕が置いたものだから。誕生日おめでとう〕


簡潔な文面。

なのに、わたしは、そんな殺風景なメールが、嬉しくなってしまう。


戸倉さんが、わたしの誕生日を覚えていてくれた。

そりゃ、わたしの誕生日7月2日のことを話したのはこの前のことだけど、あんなことがあったあとなのに、去年と変わらず祝ってくれて・・・・ホッとしたのだ。


会議室では偉そうに『戸倉さんに甘えてばかりじゃいられない』みたいなこと言ったくせに。

入社して以来、望む望まざる関係なく、ずっと近くにいた人だから。

考えてみれば、わたしの今までの人生で、こんなに長く、近い距離を保っていた人はいないかもしれない。
同級生だって、一年ごとのクラス替えで疎遠になる人ばかりだったもの。


だから、戸倉さんと距離をおくことに、寂しさとか罪悪感とかを持ってしまうのだと思う。


・・・・でも、わたしと一緒にいると戸倉さんに迷惑がかかるのだから、しょうがないわよね。


自分に言い聞かせながら、わたしは、〔わざわざありがとうございました。嬉しかったです〕と戸倉さんに返信したのだった。










< 40 / 143 >

この作品をシェア

pagetop