7・2 の憂鬱
「・・・・わたしと戸倉さんのことを、職場の人達が話してる場面に遭遇したことがあるんです・・・・」
隣から、戸倉さんが黙して続きを待つ空気がダイレクトに伝わってくる。
わたしは、冷えたペットボトルに励まされるような気がして、ゆっくり口を開いた。
「わたし自身の噂話や、いわゆる陰口みたいなのは、学生時代から耳にすることはあったんです。だから、わたしも慣れていました。でも、今回は、その・・・戸倉さんのことまで言われていて・・・・」
「何て言われてたの?」
冷静に問う戸倉さん。
「その・・・・わたしみたいな人と付き合ってるのだとしたら、がっかりだと・・・」
言いながら、わたしは、あのときのことを思い返していた。
『・・・・ちょっと戸倉さんにもがっかりだよね』
『もう、本気でがっかりー』
そのセリフを言ったのは別の人だったけど、その ”グループ” の中に松本さんがいたのは、ショックだった。
そして、わたしと一緒にいると戸倉さんの評価が下がってしまうのだと、改めて知らされたんだ。
ズキン、と心臓に何かが刺さる。
わたしはその痛みを悟られぬよう、俯いた。
すると戸倉さんが
「白河。こっち向いて?」
やわらかく、声をかけてくれたのだ。