極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「髪の色は濃い方が良いとされているのよ」

「え?」

「漆黒が最上で、次に良いとされるのが黒褐色。それから茶褐色、これは私の色ね。そんな感じて決まっているのよ」

シェールは思わず首を傾げた。
変な決まりだと思ったのだ。髪の色なんて生まれつきのもので、自分では選べない。
そんなもので優劣を付けられるなんて、あまりに不公平だ。

そう言うと、マグダレーナは得意げに言った。

「本物の貴族には髪の薄い色の子供は生まれないの。お前のように平民の血が混じると時々薄い髪の色の子供が生まれるらしいけど。知らなかったみたいだけど、その髪の色のせいでアルフレート殿下への輿入れが駄目になりそうだったそうよ。結局お父様がなんとかしたけど」

「そうなんですか……」

シェールは顔の周りで踊る蜂蜜色のおくれ毛を手に取った。
マグダレーナには馬鹿にされたけど、この髪はお気に入りだ。

(カレルは綺麗だって言ってくれた)

シェールの髪を弄りながら、甘く言ったのだ。
嬉しいと言いたかったけど、あまりにドキドキして何も言えなくて……思い出していたら、マグダレーナの甲高い声が飛んで来た。

「シェール、聞いてるの?」

「は、はい!」

「お前の髪の色については諦めるとして、カレルって男の黒い髪は大変な事なのよ」

諦めるって失礼な言い方だ。と思いつつも言っても仕方ないので続きを促す。

「どうしてですか?」

「黒は王族の色だからよ。アルフレート殿下だって黒髪でしょう?」

……知らない。
見たことが無いし、聞いたことも無かった。
そう言えば、館内の使用人達はシェールの前でアルフレートの事について話さない。
聞くのは家令からの、“帰らない”連絡のみだ。
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