極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「でもカレル……さんは平民ですよね? 森の見回りの仕事をしているのですから」

とりあえず、アルフレートの事については触れない事にした。

「ただの平民の訳はないわ。王族かそれに近い血筋よ」

断言するマグダレーナに、シェールは戸惑いながら言った。

「でも、村に王族がいるなんて話は聞いたことがありません。黒髪の事だって、誰も気にしていませんでした」

「そりゃあそうよ。正当な王族ならこんな所にいるはず無いし、髪の色の事だって知っているのは、由緒正しい貴族の家だけだもの」

「色の事、どうして秘密にしているんですか? それに黒だと良いって理由が有るのですか?」

「それは……そういうものだから」

急に歯切れが悪くなったマグダレーナの代わりに、侍女が発言した。

「黒髪が良いとされているのは、古くからこの地を守る精霊が好む色と言われているからです。その事を広く伝えないのは、黒髪の子を守る為。知れば必ず利用する者が出てきますから。黒髪の親からは、僅かな例外を除き黒髪の子が生まれてくる。ですがその逆はありません。その為に確かな血筋の証とされているのです」


侍女の話の内容は、シェールにとって衝撃だった。

(精霊って……本当にいたの?)

当然見たことも聞いたことも無い。
故郷の村の人たちも、知らないだろう。

(貴族社会では精霊が当たり前?)

結構慣れたと思っていた貴族の生活に、こんな未知の事が有ったとは。

(これは手紙に書いておかなくちゃ。あの子は私よりずっと頭がいいけど、それでも知らないはず)

そんな事を忙しく考えていると、マグダレーナの高い声がした。

「嘘! 精霊なんているの⁈」
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