極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
でも、それならば先ほど見たものは何なのだろう。

どう考えても友達関係とは思えなかった。カレルの態度は今と全然違っていたし、相手は王弟館へ向かったのだ。

サンレームが田舎ののんびりした所だと言っても、王弟館は一般の居住区からは離れた高台にある。他の行き先の可能性は少ないのだ。それに、

「さっきの人、どこかで見た事がある気がする」

どこでだったかが、全く思い出せないのだけれど。

そんな事を頭の中であれこれ考えている内に、つい口に出してしまっていたようだ。

カレルが困ったように言った。

「やっぱり見てたのか」
「えっ?」
「声に出てたぞ。どこかで見た事有るって、俺が会っていた相手の事を言っているんだろ?」
「そ、それは……」

自らの失言にシェールは血の気の下がる思いになった。
見た事はカレルに言いたくなかったのに。

この癖は本当になんとかしないと、今後の人生大変な事になりそうだ。
早急に直す訓練をしなくては。

そう決心したけれど、今この場をごまかす手段は思い浮かばない。

気乗りしないまま正直に言う事にした。

「湖に休憩に来たら森に人がいる事に気付いたの。気になって近寄ったら話が聞こえて来て……ごめん、少し話を聞いちゃった」

「なるほどな。シェールの事だから不慣れな奴が迷っていたら、とか心配したんだろう?」

「……そこまで善意的じゃないけど」

カレルの意外に普通の反応に拍子抜けする。

(あの人は、普通の知り合いか何かだった?)

「カレルが命令しているように見えたから驚いちゃったよ」

「そうか」

カレルは否定しない。

「……どうしてあんな言い方してたの? あの人はカレルとどんな関係?」

焦燥感が込み上げて、問い詰めてしまう。

カレルは困ったような表情で、「秘密」と言った。
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