極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
翌日の昼過ぎに、ユジェナ侯爵が大勢の供を引き連れやって来た。

ユジェナ家の家紋の入った豪華な馬車が、王弟館の車寄せに入って来る。
家令と共に出迎えに出ていたシェールは、馬車の扉が開き侯爵が姿を表すと、前に進み出た。

ユジェナ侯爵は、シェールに気付くと笑みを浮かべた。
にこやかな表情は、一見して良い人に感じる。

(でも油断したら駄目だわ)

あんな風にニコニコ笑っておきながら、相手が居なくなった途端に文句という毒を撒くのだ。

ユジェナ侯爵は、本音と建て前が激しい貴族らしい人物だ。


「王弟妃殿下、お久しぶりでございます」

「ユジェナ侯爵、本日はお忙しい中、お越し下さりありがとうございます」

シェールの言葉にユジェナ侯爵は、にこやかな表情を崩さないまま答える。

「とんでもございません。妃殿下より文を頂きながら、遅い到着となった事、大変申し訳なく思っております」

マグダレーナの時と同じで家令や他の使用人の目を気にしているのが、ありありと分かる。

本性を出して来るのは、人払いをした後だろう。

「ユジェナ侯爵、中にどうぞ。ここでは落ち着いて話が出来ませんから」

シェールの言葉を受けて、家令が案内をする。

王弟館の中でも一番贅を尽くした部屋である応接間に着くと、侍女達がお茶の準備をする。
それが終わると家令をはじめとした使用人達は部屋を出て行った。





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