極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「残念だがそれはない。アルフレート殿下には既に意思確認を済ませている。お前との婚姻継続を望むそうだ。結婚千日目の記念すべき日、この館にお帰りになるそうだぞ」

シェールは青い瞳を大きく見開く。


「アルフレート殿下が……この館に来る?」

「そうだ。せいぜい美しく着飾ってお出迎え下さい、ラドミーラ妃殿下」

ユジェナ侯爵は馬鹿にしたような目でシェールを見据える。

シェールが反論しようと口を開きかけたその時の、慌ただしい足音が近づいて来た。


「お父様!」

扉が開くのと同時に甲高い声がした。
ユジェナ侯爵はそれまでと違い、本当に驚いたようで表情を崩す。

「マグダレーナ? そんなに慌ててどうしたのだ?」

「お父様がいらっしゃっていると聞き、急いで来たんです」

「なんだ? 出迎えが無いと思っていたが、知らされて無かったのか?」


ユジェナ侯爵は、シェールをジロリと睨む。

マグダレーナは、何か訴えたそうな表情でシェールを見ていたけれど、シェールが何も言わないでいると、ユジェナ侯爵に視線を戻した。

「お父様は私を迎えに来たのですか? ルドヴィーク様との結婚をさせる為に」

ユジェナ侯爵はシェールに対する時とは違った、穏やかな声で答える。

「その話は纏まる前に立ち消えているから安心しろ。マグダレーナの相手は、フロリアン伯爵家の次男だ。顔見知りだし気が楽だろう」

マグダレーナは酷く驚いたようで、令嬢らしくなくぽかんと口を開いた。けれど段々と事態を把握したのか、ほんのりと頰を染めて頷いた。

シェールは【フロリアン家の次男】を見たことがないし、噂すら聞いた事は無いけれど、マグダレーナの反応を見る限り、きっと良い相手なのだろう。
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