極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
散々振り回された結果がこれかと脱力したけれど、シェールとしては、マグダレーナに不幸になって欲しい訳ではない。

ただ、自分とカレルの邪魔をしないで、帰ってくれたら良かったのだ。

マグダレーナの問題が一件落着したなら良かった。シェールがそう気持ちの落とし所を見つけていると、思いがけない台詞が聞こえて来た。

「お父様。シェールがアルフレート殿下と離縁する事は叶わないでしょうか?」

驚くシェールを横目でみながら、ユジェナ侯爵がマグダレーナに答えた。

「それは無理だ。なぜマグダレーナがそんな事を言う?」

「シェールは本当は結婚するのが嫌だったそうです。だから今からでも離縁して元の生活に戻れないかと思って。嫌な結婚をした上にこんな田舎に住むなんて、シェールが可愛そうです」

マグダレーナは真剣な面持ちで言う。おそらく彼女なりに考えての発言なのだろう。
けれど、いくら愛娘の頼みと有っても、ユジェナ侯爵がシェールに同情心を持つはずがなかった。
シェールに鬱陶しそうな視線を送りながら言った。

「王弟殿下の妃になれたのだ、不幸なはずがない。それにアルフレート殿下は近いうちに住まいを王都に移すだろう」

「王都に? なぜですか?」

「今後は重職に就くからだ。ここては何かと不便だからな」

「そうなのですか?……でも……」

マグダレーナは眉根を寄せて考えこんでいたけれど、しばらくするとはっきりと言った。

「お父様、シェールはきっと王都にも行きたくないと思っているはずです。平民暮らしの時にやりたくて出来なかった事が有ったそうですから……私たちからすると感覚がおかしいし、馬鹿だとは思いますけど、それがシェールなのです」

庇っているのか、貶しているのかよく分からない台詞を言い、マグダレーナは両手を胸の前で合わせてユジェナ侯爵を見つめる。

(あれ、おねだりの時のポーズなのかしら?)

緊迫した状況にも関わらずそんな事を考えていたシェールは、ユジェナ侯爵の大きな溜息によって意識を戻した。
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