極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「アルフレート殿下。実際お目にかかるのは初めてとなりますのでご挨拶を。ラドミーラ妃の父、ユジェナ侯爵です。お見知り置きください」

彷徨っていたアルフレートの視線が、ユジェナ侯爵に止まる。

「これは義父上。わざわざの出迎え感謝する。また、これまで手紙でのやり取りしかして来なかった事を謝罪する。申し訳なかった」

アルフレートはそう言うと僅かに頭を下げる。
ユジェナ侯爵は大層満足そうに微笑むと、親し気に話を続けた。

「込み入ったご事情が有ったのでしょう。母君のご実家の件など多少は聞き及んでおりすので、当家の事はお気遣いなく。それにしてもアルフレート殿下が、このような立派なお方だとは……失礼ながらもう少し年若いのかと想像しておりました」

よく聞けば無礼とも言えるその言葉に、アルフレートは気にした風でもなく頷く。

「先王の第七王子と言う身分が、そう思わせるのだろう」

「全くその通りです。第六王子殿下の年を考えると、殿下は我が娘より年下かと存じておりました故」

「この国の王位継承権は第一王子から順に発生するから、後ろ盾が無かった俺が年齢に関係なく一番下の王子になっただけだ」

「それはゆゆしき事態でございますな。今からでも位上げを願い出てはいかがでしょう。アルフレート殿下の血筋とコルダ公爵家の後見が有れば可能かと。当然私も殿下の義父として微力ながらお力添えをさせて頂く所存です」

張り切って言うユジェナ侯爵に、アルフレートはやや困った様子で相槌を打った。

「そうだな。その時が来たら義父にも手助け頂くとしよう……ところで妃の姿が見えないようだが」

ユジェナ侯爵が答えるより先に、それまで黙っていた家令が進み出て来た。

「ラドミーラ妃殿下は未だ体調が回復しておりません。今は大事を取って居室でお休みされています」

家令の報告に、アルフレートの顔が曇る。

「申し訳ありません。ラドミーラ妃には殿下のお出迎えをするようにと何度も進言したのですが聞き入れられる事なく……今一度声をかけて参ります」

そのまま身を翻してシェールの部屋に行きそうなユジェナ侯爵を、アルフレートが呼び止めた。
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