極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
それから六日が経った。

シェールの病は回復が遅れていて、まだベッドの中での生活が続いていた。

マグダレーナはユジェナ侯爵が連れて来た護衛兵に守られて、侍女と共に先に王都の屋敷に帰って行った。
帰る間際にシェールの見舞いをしたいと騒いだが、ユジェナ侯爵が許さなかった。

ユジェナ侯爵はシェールと共に、王弟アルフレートの帰還を出迎える為、未だ館に滞在し、主人の不在の館で自由気ままに振舞っていた。


そして、アルフレート帰還の日。

予定より一日早く着くと先触れを受けた王弟館の車寄せには、ユジェナ侯爵を含めた、王弟館に関わるほぼ全員が集まっていた。
姿を見せないのは、依然として伏せったままのシェールだけ。

ユジェナ侯爵と家令を先頭に、整然と並び終えると、複数の蹄音が近付いて来た。

「……なんだ?」

ユジェナ侯爵が眉をひそめる。
使用人達の間にも騒めきが広がり出した頃には、馬を駆る集団は王弟館の敷地に入って来ていて、車寄せの前で漸く止まった。

驚く人々の前で、先頭で馬を駆っていた黒髪の青年が身軽に馬から飛び降りる。

すると家令が進み出て、深く頭を下げた。

「おかえりなさいませ、アルフレート殿下」

その瞬間、周囲の騒めきは大きくなる。
家令以外の使用人は仕える主人の顔を知らなかったのだから無理はないけれど、それにしても実際の王弟アルフレートは噂の人物とはかけ離れていたのだ。

有力な後ろ盾も地位もなく、田舎の小さな領地に追いやられた、年若い王子。
身体の内にも外にも問題を抱えている為、表に出ない引きこもり。

皆がそんな人物像を持っていたのだろう。けれど、今現れたのは、はっとするような美青年。

馬を駆る姿は力強く、とても病弱には見えない。王の貫禄すら感じさせる、堂々とした佇まい。
辺りを見回す視線は鋭い。

家令以外の誰もが戸惑う中、いち早く動揺から立ち直ったユジェナ侯爵が発言した。
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