極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「俺の?」

カレルが驚きの声を上げる。
ミシェールは箱から一通の手紙を取り出すと、封筒から中の便箋を取り出した。

「これを。シェールがこの館で最後に書いた手紙です」

「……ミシェールに宛てたものだろう? シェールの許可なく俺が読むわけにはいかない」

「いいえ。是非読んで下さい。あの子がどう感じていたのか、あなたに知ってもらいたいのです」

カレルは躊躇いながら手紙を受け取り、緊張の面持ちで手紙を広げた。




親愛なるミシェールへ

約束の千日目まで、あと二日。

これが王弟館で書く最後の手紙だと思うと、なんだか不思議な気がしているの。

初めは終わりなんてずっと先の事で、永遠に来ないんじゃないのか、なんて思ってたけど、過ぎてみれば、意外とあっという間だった気もしてる。

特に最近は、マグのおかげで慌ただしかったからね。
約束の日を目前にしてマグが来た時は本当に焦ったわ。
マグは貴族のお姫様の割に鋭くて、私達の入れ替わりに気付くような気がしたの。
絶対に追いかえさなくちゃと思って計画になかったユジェナ侯爵召喚をしちゃったけど、結果上手くいって良かった!終わりよければ全て良し!

でもね、マグは本当にワガママで高飛車だけど、実は最後に少しだけ印象が変わったの。彼女は私が思っていたより、良い奴かもしれないなって……分からなくなったからミシェールが自分で確かめてね。

そうそう、最後なので、サンレームの人達の最新情報を書いておくね。

まずは王弟館の影の支配者の家令さん。

名前は……最後まで分からなかった。
初めに紹介されたのに覚えられなかったの。
今更本人には聞きづらいし、他に聞く人はいないし。
彼は結構良い人な気がする、なんとなくだけどね。
今思うと、私に結構気を使ってくれていた気がするの。
それにね、最近気付いたんだけど、凄く綺麗な顔をしているの。髪もまるで天使のような綺麗な金髪よ。私はほとんど話さなかったけど、仲良くしたら楽しいかもしれないわ。

次に王弟館の侍女さん。
彼女とは少しも仲良くなれなかった。まあ、極力話さないようにしてたから仕方ないんだけど。
とにかく恐れられています。ミシェールがその印象を変えるのは結構大変だと思うわ。

次に、村の薬師ノーラ。
私の師匠。口調はきついけど面倒見が良くて、薬師の腕は一流。

私達のお揃いの指輪を預けてあるの。
ミシェールの指輪を見せたら診察して貰う手配になっているから一度行ってみてね。
ミシェールが王弟館を抜け出せるか心配だけど、その辺は上手くやってね。


そして、最後に書くのはやっぱりカレル。

村で出会った謎の男。

ミシェールは私が暗い毎日を送っているか心配してくれていたと思うけど、安心して。

結構楽しく暮らしていました。

その証拠にね、私、恋をしたの。
いつの間にか、カレルを好きになっていたの。

本当は恋なんてしている時じゃないんだろうけど、会う度に好きになっていった。

彼と約束したの。次に会った時はお互い秘密は無しにしようって。
私がこの館を出たら次にいつ会えるか分からなかけど、でも絶対に会えるって信じている。

可能性は低くても諦めなけれは叶うでしょう?

私達、二人共幸せになれると信じてる。
ミシェールともまたきっと会えるってね。

だから、ミシェールも諦めないで。
あなたの幸せと無事を心から祈ってます。

リュシェールより。


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