姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
それなのに、顔や腕は、何やら温かい飛沫で濡れている。
孝は反射的に瞑った、目を恐る恐る開いた。
「な、ん……で……?」
喜咲の胸から、みるみる鮮血が染み出していた。
彼女は傷口を押さえ、前のめりに倒れ込んだ。
孝は訳が分からず戸惑いつつも、咄嗟に喜咲を受け止めていた。
「今の……何が……」
孝が茫然と呟いた。
一方、喜咲は激痛に耐えながら、必死に頭を働かせた。
――突然、爆発した胸。
この青年が何かしたか?
いや、それはない。
こいつはただ目を閉じて、震えていただけ……。
誰かに狙撃された?
でも前方は海だ。
背中に傷は無いので、背後から狙われたわけでもない。