姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



それなのに、顔や腕は、何やら温かい飛沫で濡れている。

孝は反射的に瞑った、目を恐る恐る開いた。

「な、ん……で……?」
 
喜咲の胸から、みるみる鮮血が染み出していた。
 
彼女は傷口を押さえ、前のめりに倒れ込んだ。
 
孝は訳が分からず戸惑いつつも、咄嗟に喜咲を受け止めていた。

「今の……何が……」
 

孝が茫然と呟いた。


一方、喜咲は激痛に耐えながら、必死に頭を働かせた。
 

――突然、爆発した胸。

この青年が何かしたか?

いや、それはない。

こいつはただ目を閉じて、震えていただけ……。


誰かに狙撃された? 

でも前方は海だ。

背中に傷は無いので、背後から狙われたわけでもない。


< 252 / 317 >

この作品をシェア

pagetop