姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
「落ち着くです!
とにかく、手当てをするですよ……!」
(手当てだと?
冗談も休み休み言え。
私を殺そうとしたお前が……)
「て、手当て……何をすれば……?」
「傷は胸です。
とりあえず、仰向けに……!」
「はい!」
うつ伏せに孝に倒れかかっていた喜咲は、彼にごろりとひっくり返された。
「……がはっ!」
いささか手荒い扱いに文句の一つも言いたくなったが、
喋ろうにも熱い血が、口の中で暴れるだけだった。
「わわっ!
もっと、そーっとやるです馬鹿!」
「すいません!」
(うるさい……)
喜咲は、孝に膝枕されているのに近い体制になった。
窒息しないようにの配慮なのか、孝は喜咲の上体を、可能な限り支えていたのだった。
それが、正しい処置なのか分からないまま。
「……それでは、いくです」
雪絵は深呼吸をしてから、両手で喜咲の襟元を掴んだ。