姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



「う、うわ………あああぁああっ!」
 
孝は、瀕死の喜咲を抱え、思い出したように悲鳴を上げた。
 
その声を聞きつけ、雪絵が目を覚ます。

「な、何事です……?」
 
驚き駆け寄った彼女に、孝は縋るような眼差しを向けた。

「どうしたです!」

「わ、分からない……いきなり、倒れてきて……

血が……っ!」
 
血溜まりは、容赦なく広がっていく。
 
呼吸が苦しい。

肺が潰れたようだ。
 
喜咲は、掠れていく意識の中、自棄っぱちに思った。

耳元で大声を出すな。

自分はもう死ぬんだ。

何をしても助からない。


(せめて、最後は静かにしろ……)
 

だから、雪絵の言葉に耳を疑った。


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