姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



エリアルは、容赦なく斬りかかってきた。
 
何とか受けるが、一撃一撃が重い。
 
重力を無視して飛べる彼は、力の向きと体重を考えなくても自在に動けるのだ。
 
そのうち銀司は、抵抗らしい抵抗が出来なくなっていった。

あっという間に、血だるまになった。

嬲られている。そう思った。
 
しかし、諦めかけたその時、にわかに風向きが変わった。
 
そして運ばれてきたある『匂い』に、銀司はぞわりと全身の毛を逆立てた。

(この、血の匂いは……!)

「……ん?」
 

不意に、エリアルも顔をしかめた。
 
通常ならありえない量の血の匂いに、両者の動きが止まる。


「……き、さき……?」
 

銀司は、震える声でそう呟いた。
 
あくまでも疑問形で。
 

断定してしまったら、絶望になってしまうから。

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