姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



だがその思いとは裏腹に、風に乗って血の匂いは、どんどんと濃くなっていく。


「喜咲……う、うああっ……ぁぁあああああああっ!」
 
銀司は咆哮し、我を忘れて駆け出していた。
 
倉庫の屋根からアスファルトの地面に飛び降りる。

それは、小夜子の真上での出来事だった。


彼女は踏み潰されるのを危惧して咄嗟に避けた。

風圧や衝撃に耐えつつ、小夜子は身構えたが、

銀司は彼女など目に入らない様子で、そのまま行ってしまった。
 
エリアルも、彼を追う。

「……エリアル! 一体どうしたの?」

「分からない、ただ……」

 
エリアルは、小夜子のすぐ傍に着地した。

「孝の近くで、何かがあったようだ」

「そんな……」
 
小夜子が、思わず手で口元を押さえる。

「行こう!」

「ええ……」
 

エリアルは、小夜子を抱え上げると、再び宙へと舞い上がった。


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