姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
銀司は、空中に赤黒い血を撒き散らしながら、疾風のように走った。
心臓が肋骨の中で、暴れ狂うように脈打っている。
その拍動に合わせて、体中の傷が熱を持って痛んだが、今はどうでもいい事だった。
緊張のせいか、どんどん呼吸が乱れていく。
それでも必死に、落ち着け、落ち着けと念じる。
喜咲とは、どちらかが青子を仕留めた後、
予め決めておいた場所――さっきまでエリアルと戦っていた、廃倉庫の辺りで落ち合う予定だった。
銀司の狩りを手伝いたいという、喜咲の強情な訴えに、彼が折れた形となった。
それなのに、いつになっても近くに喜咲が来る様子が無かった。
自分は、期せずして小夜子を人質にとり、
エリアルを誘き寄せて戦う事にはなってしまったが、それにしても喜咲は遅かった。
か弱い一般人を相手に、何を手こずっているんだ……。
その謎は、風と共に運ばれてきた匂いで解けた。