姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③




銀司は、空中に赤黒い血を撒き散らしながら、疾風のように走った。

心臓が肋骨の中で、暴れ狂うように脈打っている。

その拍動に合わせて、体中の傷が熱を持って痛んだが、今はどうでもいい事だった。

緊張のせいか、どんどん呼吸が乱れていく。

それでも必死に、落ち着け、落ち着けと念じる。


喜咲とは、どちらかが青子を仕留めた後、

予め決めておいた場所――さっきまでエリアルと戦っていた、廃倉庫の辺りで落ち合う予定だった。

銀司の狩りを手伝いたいという、喜咲の強情な訴えに、彼が折れた形となった。
 

それなのに、いつになっても近くに喜咲が来る様子が無かった。
 

自分は、期せずして小夜子を人質にとり、

エリアルを誘き寄せて戦う事にはなってしまったが、それにしても喜咲は遅かった。

か弱い一般人を相手に、何を手こずっているんだ……。
 


その謎は、風と共に運ばれてきた匂いで解けた。



< 265 / 317 >

この作品をシェア

pagetop