姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
 


正式な手続きは、テミスの支部か本部で行われる。

本部はアメリカにあるので、間違い無く支部になるだろう。

しかし、彼はまだのようだった。


「……まあ、実際はもっと色々、長い話だったけどね」

「それで、君は何と言ったんだ?」
 
鬼山は、急に地面に座り込んだ孝の目線に合わせて、しゃがみ込んだ。
 
その時やっと、孝の怪我が目に入った。

 
線維と皮膚の焼けた匂いに、無数の擦り傷。

打ち身になっているところは、紫ですらなく、赤い色をしていた。


「入るって言ったよ。

姉さんと、居候の吸血鬼……」


「おや、君! 怪我してるじゃないか。

ひどい火傷だ……!」
 

鬼山の大声は、既に孝の耳には届いていないようだった。


「……エリアルと、一緒に……」
 

孝は、ぐらりと体勢を崩し、鬼山に支えられた。


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