姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
「おい、大丈夫か!」
「………っ」
しかし、そのまま孝は目を閉じてしまった。
孝の体はじっとりと重く、呼吸は、低く浅かった。
顔面は蒼白。
そして、全身の異常な発汗。
ショックを起こしているかもしれなかった。
鬼山は、舌打ちをした。
テミス支部に正式な挨拶を済ませていないのだとしたら、当然『投薬』もまだだろう。
肉体の強化すらしていない少年に、可哀想な事をした。
「おーい、担架を早く! 急げ!」
鬼山は、孝をさっさと抱え上げると、担架を用意した者のもとへ駆け出した。
彼らの到着など、もどかしくて待っていられなかった。
そして、孝を担架に乗せ、よく頑張ったな、と柄にも無く呟いた時だった。
一匹の狂獣が、突撃してきたのを見た。