姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
鬼山は、変化が解けて人間の姿を現した者を見て、そのあまりの若さに言葉を失った。
この手負いの暴れ狼は、もっと歳を取った個体だろうと、勝手に勘違いをしていた。
あの若さで、あの激痛に耐えられるとは思えなかった。
――だけど、あの子なら……?
青年は歯を食いしばり、体を起こそうとした。
瞬間的に鬼山の中で、銃に撃たれて跳ね上がる目の前の青年が、あの時の子供と重なった。
そして、茫然と名前を呼んだ。
「まさか君は……『銀司』、君……?」
青年は答えずに、仰向けに倒れた。
最後に何かを呟いたように口を動かしたが、言葉にはならなかった。
ただ彼を中心に、血だまりが、音も無く広がって行く。
しかし、鬼山が駆け出したその途端、軽い爆発と共に、辺りに煙幕が張られた。