姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



少年は、麻酔を嗅がされる前に、短くそれだけ呟いたと、後で聞いた。

その後、どんなに気になっても、鬼山はその少年と会う事が出来なかった。

少年は、テミスの中でも特別な施設に収監され、再教育を受けているとの事だった。


『今では珍しい、日本の狼族を手に入れた……』

という上層部の呟きに、吐気を覚えたのが忘れられない。



ただ一言、鬼山は彼に謝りたかった。


――狼男と戦って、そんな事を思い出した。


「撃て」
 
狙撃手の短い指令とほぼ同時に、数発の撃鉄が響いた。
 
今では、狙撃手達の弾丸に、殺傷力の高すぎる『銀の弾丸』が使われる事はない。

彼らの携える特殊なライフルには、麻酔弾か疑似銀弾が込められている。


あの事件が無ければ、疑似銀弾も開発されなかっただろう。


(そんな事で、帳消しになるような事じゃないけどな……)


< 277 / 317 >

この作品をシェア

pagetop