姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
 


 
青年は、両手を前に翳した。

しかし、もうその『矢』はエリアルの支配下にあった。

コントロールが利かない!
 
自らの『血』を自在に操る悪魔――吸血鬼!
 

なんて奴らだ!
 


だが、それでも青年は、自らの誇りは失わなかった。


「……この『矢』は、僕のものだ!」
 

『黒い矢』は、数本が体を貫通し、その他も容赦なく彼の体を鋭く傷付けた。

頭の三分の一近くが吹き飛び、青年はよろけた。
 

ふらりと前のめりになり、自分の体の、『矢』に抉られた部分を、同じく抉れかけた手で触っていた。

……それでも、死なない。
 


『黒い矢』は、戻って来なかった。

あれを自在に操るには、まだエリアルよりも、彼に分があるようだった。
 

抉れた肉は、パリパリと再生し始めていったが、彼は攻撃の手段を奪われてしまった。


「ふふ……ふふふ……予想以上です。

……この僕とした事が、熱くなるなんて……」


< 290 / 317 >

この作品をシェア

pagetop