白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】
少し遠いところに縞々の庇(ひさし)と、小さな看板にカフェの文字が見えた。
思い通りの可愛い雰囲気に引き寄せられ、足取りが軽くなる。
広い歩行者用道路は歩きやすくて、ちゃんと整備されている。
私を通り過ぎた一台の黒い車が車道の脇により止まった。
横目で見ながら店に向って歩き続ければ、車の窓が開いた。
「・・・ノリ。」
「え?」
名前を呼ばれた。
ゆう君しか呼ばない、私の呼び名。
「ゆう君?」
立ち止まる私に、運転席からサングラスを外すゆう君の懐かしい顔が見えた。
小走りで車に近寄る。
「ゆう君!」
「・・・本当に来たんだな。」
「来たよ!・・・ていうか、もう2ヶ月も前にきたんだよ。」
ゆう君の手が伸びて、私の頭をゆっくりと撫でる。
ちょっとくすぐったくて、ちょっと照れる。
「・・・どっか寄るとこあるのか?」
「ん?ランチしようと思ったの。・・・おススメの店ある?」
「そー言えば、オレは朝も食べてなかった・・・夜勤からずーといそがしくて。乗って。一緒に食べよう。」
「っ!! うん!」
嬉しくて、犬なら尻尾がちぎるくらい振っている。
助手席に乗れば、日本で乗せてもらっていたの車と違う香りがする。
急に世界の中で2人っきりになった気分だ。
異国の誰も知らない所で、知り合いはゆう君だけ・・・。
それでいい。
私の世界はそれだけでいい。