吸血鬼と愉快な嫌忌者達。
どうやら私は吸血鬼らしい。

貴女は吸血鬼なのよ。




「よく聞いて、夜月。貴女は吸血鬼なのよ。」


「へー、そんなんだ。」

私の名前は音羽 夜月。よく夜月をよづきと言う人が多いけどこれで(よる)という。

ちなみにこれは私の人生を大きく変えた日の朝の母、音羽 舞との会話。


「あら、つまんないわね。もっと狼狽えると思ったのに。」

「普通そこは『貴女は魔法使いなの。』っていうところでしょ。

で、吸血鬼って何すればいいの?毎日人を殺して血を啜ればいいの?」

「じゃあ、手始めに実の母を殺してみる?母の生き血を啜ってみる?」

母の言葉に悪ノリした私はソファーから立ち机の上から母を殺せそうなものを探す。

やっと見つけた果物ナイフを手に取った私は母のそばまで駆け寄り、母に向かってナイフを大きく振りかぶる。


母は微動だにしない。


結局、母にはナイフは当たらなかった。

理由は簡単。

私と母の間に割って入った人物がいたからだ。




「はい、そこまでなー」

母を守るようにして私から果物ナイフを取り上げたこの人物こそ私の父、音羽 湊だ。

「なんで止めたの?」

私は父に尋ねてみた。

「んー?そりゃー愛しい舞が娘に殺されそうだったら助けるだろー?」

父はガッハッハっと豪快に笑う。




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