ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「いくらなんでも、アカリ様を下界に連れて行くのは危険ですよ!」
「うるさい。ついて来い、ノア」
「シュヴァルツ様ぁー!」
シュヴァルツさんが広間の奥にあった恐ろしい鉄の扉へ手をかざすと、その扉は重苦しい音を立てながらゆっくりと開いた。
扉の向こうは、真っ暗な闇が広がっている。
暖炉からこの世界へ来たときと同じ、真っ暗な闇。さらに知らない場所へ飲み込まれていく気がした。
「シュヴァルツさん……」
恐怖で足がすくむ。
すると頭に手を添えられて、グッと彼の胸の中に押し付けられ、視界は黒くなった。
「アカリ。俺から離れるな」
……今は彼を信じるしかない。
彼とともに扉の向こうへと一歩を踏み出すと、私は全てを委ねるつもりで、目を閉じた。