さようなら、ディスタンス。
光くんからの反応があったのは、眠りかけた時。0時半。
スマホ画面に彼の写真と名前が表示され、はっと目が覚めた。
珍しく電話だった。
『未織? もしかして寝てた?』
「起きてたよ。どうしたの?」
『ごめん、声がききたくなって……』
スマホに思いっきり耳をくっつけないと言葉が聞き取れない。
落ち込んでるか、悩んでるか。どっちかの時に発されるトーンだ。
「何かあったの?」
充電コードを引っこ抜きながら、上半身を起こす。
言葉が返ってこないため、
「いいとこでのライブ、決まったんでしょ?」と続けた。
『うん』
「よかったじゃん」
『そうだね……』
「最近、曲は作ってるの?」
『まぁ……うん』
うーん。反応が鈍い。
言葉にしてくれなきゃわからないのに。
こういう時に感じる。この町と東京の距離は電話でもラインでも埋められない。
『未織……ライブ、来れる? 3連休だし、どう?』
「お金のことあるし、お母さんに相談してみる」
『わかった。ありがとう』
ほんの少し声色が明るくなった。
いいとこでライブするのが不安なのかな。
もっと自信持てばいいのに。光くん歌上手いしかっこいいんだから。