年下御曹司は初恋の君を離さない
「で? 姉ちゃんはどこから知っている?」
「どこからって……? それより、紀彦は友紀ちゃんといつ知り合ったの?」
「は? まさかそこを知らないとか?」
「多分、なんにも知らないと思う……」

 困って眉を下げると、紀彦は「マジか!」と目を大きく見開いて驚いている。
 驚きたいのはこちらの方だ。もう、今朝からなにがなんだかわからない状況に追い込まれているのだ。

 さっさと私をこの困惑から解放してほしいものである。
 そう紀彦に言うと、私の顔を見てますます不憫そうにため息を零す。

「あのさ……怒らないで聞いてほしいんだけど」
「時と場合による」
「あー、じゃあ言わない」
「とにかく吐け。あとで知ったときには、もっと大変になるわよ」

 紀彦にニッコリとほほ笑んだのだが、この笑みはかなり怒っているときのものだと長年私の弟をしている彼なら知っているだろう。

 顔を引き攣らせてコクコクと何度か頷いたあと、再び深く息をついた。

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