年下御曹司は初恋の君を離さない

「では、隣のホテルのラウンジに行きましょう。あそこなら、落ち着いて話ができそうですから」

 この百貨店と隣接されているホテルは、連絡通路で行き来できるようになっている。
 和菓子博をしている催事場階に連絡通路があるので、すぐに隣のホテルへと行くことが可能だ。

 一度バックヤードから出た一行は、その連絡通路に向かう。
 友紀ちゃんとせせらぎの社長が談話しながら、ゆっくりと歩いていくのを見つつ、その裏にせせらぎの社長秘書。そして、その後に私と藤司さんの二人が付いていくという形になった。

 できれば、友紀ちゃんの側で控えていたい。
 そうすれば、藤司さんからの接触は避けることができる。

 しかし、今の状況では、友紀ちゃんに助けを求めることはできない。自分でなんとかしなければならないだろう。
 早くラウンジに着きたい。その一心で、隣にいる藤司さんに気取られないよう、前だけを向いて歩いて行く。

 だが、私の目の前を台車がたくさんの荷物を載せて横切った。
 そのため、友紀ちゃんたちとの距離が離れてしまったのだ。その上、そこでその台車から荷物が落ちてしまい、私たちは足止めをされてしまった。
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