年下御曹司は初恋の君を離さない

 何度も「大丈夫です」と伝えたのだが、誰も私の言い分など聞いてくれなかった。
 挙げ句、午後からは秘書室での軽い仕事のみ。資料作りもしなくていいとまで言われて、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 智子ちゃんにいたっては本当に申し訳ないほど心配してくれた。帰りだって、『ロビーまでは私がお送りします!』と鼻息荒く言われてしまったのである。

 有無を言うことができそうにないほど真剣な顔で言われたので、智子ちゃんの言葉に甘えたのだ。

 智子ちゃんに手を振ったあと、私は彼女に背を向けて駅へと向かって歩き出した。

 今日は社長秘書である先輩が風邪でダウンしてしまったため、急遽私は社長秘書として午前中は外出することに。
 会社に戻ったあとは、社長も終日社内のスケジュールが組まれていたので、私の役目も午前中までだと思っていた。

 午後からは友紀ちゃんに頼まれていた資料作りに励めるかな、と午後からのスケジュールを頭の中で組みながら副社長室に戻った私だったが、そこで辛い現実を突きつけられることに。
< 246 / 346 >

この作品をシェア

pagetop