年下御曹司は初恋の君を離さない

 酷評を言われる可能性だってあり、普通ならやらないプレスリリースだろう。
 しかし、そこをあえて小華和堂はチャレンジしてきた。それだけ、今回の抹茶チョコに自信があるからだ。
 とにかく失敗はできない。それだけは確かである。

 私は鏡を覗き込みながら口紅が少し取れてしまっていることに気がつき、慌てて口紅を鞄から取り出す。

 自分の唇を見つめて、ここ最近のことを思い出して顔が熱くなる。
 友紀ちゃんから毎日されるキス……彼の唇の感触を思い出して頬が赤く染まった。

 友紀ちゃんへの想いを告白できぬまま、一週間が経つ。
 想いが伝えられないというジレンマは、より彼に近づきたいという欲求を増幅させているように思える。

 彼のことが好きだ、と言うタイミングはいくらでもあった。だが、今は言わないでほしいと友紀ちゃんにお願いされているので言わないだけである。
 本当は伝えてしまいたい。この一週間に何度思ったことだろう。

 オフィスだけで顔を合わせているのなら、グッと我慢をすることもできたはずだ。
 仕事をしている最中なら、秘書の顔をしていればいいだけである。ポーカフェイスを装うことぐらいできる。
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