年下御曹司は初恋の君を離さない
コンコンとノックをし、部屋の中にいる人物に声をかける。
すると、朗らかな声で「どうぞ」と聞こえてきた。
その声に小さく笑みを浮かべたあと、ゆっくりと扉を開く。
「こんにちは、副社長。ご気分はいかがですか?」
「未来さん、こんにちは。おかげさまで、だいぶ調子はいいよ」
入院したときは心配になるほど青白く顔色が悪かった副社長だったが、今は血色がよいように見える。
彼は少しだけ痩せてしまった頬を揺るませ、私を優しく見つめた。
日に日に調子がよくなっていく様子を見て、ホッと胸を撫で下ろす。
すると、副社長がいるベッドの横に椅子に腰かけ、にこやかにほほ笑んでいるご婦人を見つけた。
「こんにちは、征子さん。お邪魔いたします」
「お邪魔なんてとんでもない。主人と二人で退屈していたところなの。未来さんが来てくれて嬉しいわ」
ね、と視線を交わし合う二人が可愛らしい。
口元を綻ばせて、私は二人を見つめた。