年下御曹司は初恋の君を離さない

 だが、去り際も大切だ。私のことを諦めて惜しいことをしたな、と思わせたい。思ってもらいたい。
 そんなことを考えながら、たくさんの人に囲まれている友紀ちゃんを見つめる。

「っ……」

 キラキラとした目をしてほほ笑んでいる友紀ちゃんが一瞬、私の方を見たように感じた。
 だが、それは私の願望だろう。彼の目線にはマスコミ各社、そして畠山さんがいる。きっと彼女に視線を向けたのだろう。

 ツキンと胸の奥が痛む。この痛みは、いつかなくなるときがくることを祈りたい。
 持っていたファイルをギュッと胸に抱きしめ、力を込める。

 すると、彼に向けた質問がなぜかプライベートのことへと流れていく。
 段取りでは、新商品の説明や今後の見解のみインタビュー可能だと各マスコミには伝えてあるはずだ。プライベートはNGで出しておいたのに、どうしてこんな流れになっているのか。

 これはマズイ、と人の輪に入り込もうとしたのだが、友紀ちゃんの言葉で動きを止めた。
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