年下御曹司は初恋の君を離さない
どうしてその二人が反対したのか……。
見合い自体遠慮したいので、正直お二人が反対してくれたのは助かったが。
なぜだろう、と頭を捻って導きだされた答えは、あっけなく出てきた。
(そうか。私が寿退社なんてしたら、策士で扱いにくいという新副社長の秘書になる人材がいなくなるからかな)
一人納得していると、隆二さんは「とにかく」と話を纏めた。
「近いうちに甥っ子が未来さんに会いにくると思う。就任は今度の六月に行われる株主総会で決議されてからだけど、仕事を覚えるために早めに本社勤務になるはずだ」
「はい、わかりました」
真剣な面持ちで頷くと、隆二さんはチラリと私を見たあとに、なぜか大きくため息をついた。
「隆二さん?」
私の顔をジッと見つめたあと、隆二さんは心底心配そうに口を開いた。
「何かあったら、必ず僕に言うんだよ?」
「隆二さん?」
「いいね! 未来さん」
「は、はい。必ず」
隆二さんの剣幕に押され、何度も頷くと、ようやく彼は安堵したようだ。
そのときは、隆二さんの言っている意味がよくわかっていなかったのだが、私はあとで思い知ることになるのだ。