年下御曹司は初恋の君を離さない


 そんなことを考えながらパソコンの電源を付けていると、智子ちゃんが思い出したかのように私に耳打ちしてきた。

「あ、そういえば。今日来るって言っていたかもです」
「え?」

 何のことかと思って聞き返すと、智子ちゃんは顎に手を当て首を傾げた。
 その様子はとても可愛らしかったが、内容はとんでもないものだった。

「ゆきちゃんのことですよ」
「ゆきちゃん?」

 一体誰のことなのか。
 智子ちゃんの友人となれば、もしかしたら他社の重役なのかもしれない。

 そんなスケジュールが入っていたのか、共有しているスケジュールファイルを慌てて開く。

 すると、智子ちゃんはケロッとした顔で言い切った。

「え? ああ、副社長のことです」
「は?」
「ですから、新副社長ですよ。小華和友紀です」

 副社長の名前は、きちんと確認していた。
 あの友紀ちゃんと同じ名前で、同じ漢字だったので、すぐに覚えたのだが……

< 49 / 346 >

この作品をシェア

pagetop