年下御曹司は初恋の君を離さない


 私と智子ちゃんは、秘書部のオフィスに入りながら今日の打ち合わせをする。

 先日お見えになった、メインバンクの頭取へのお礼の品はどうするのか。
 過去のデータを引っ張り出して調べる必要がありそうだ。
 
 あとでデータを調べてみると言うと、智子ちゃんは「では、私がお使いに行ってきます」と張り切ってくれた。
 

 現在、副社長は入院中だ。
 
 今までは社長や専務、私たち秘書部の人間がその穴を埋めるべく動いてきた。
 だが、副社長は仕事復帰はせず、そのまま療養へと入ることが決定している。

 私が副社長——小華和隆二さんの口からその決定を聞いてすぐのころ、会社は動き出した。

 次に副社長のポストに座る、社長の息子———小華和友紀さんを迎える準備だ。

 就任は、来月に行われる株主総会で決議されてからになるが、その前から動き出さなければ間に合わない。

 なんと言っても、彼は我が社での勤務経験はない。
 ありとあらゆるデータ、そしてその説明をしなければならないだろう。その任務は、ここにいる秘書部の社員、そして専属秘書に決まっている私だ。

 新副社長が本社へやってくる日を、正式には聞いていない。
 早く決定して教えてください、と再三秘書部長にお願いしているのだが、のらりくらりと躱され続けている。

 私としては、すべて整えた万全な状態で新副社長をお迎えしたいと考えているのに……

 いつもは頼りになる上司である秘書部長、それなのに、一体今回はどうしたというのか。

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