年下御曹司は初恋の君を離さない

 
 その男性は、私より年下のはずだ。だが、その精悍な顔つきを見ると、とても大人な雰囲気を感じる。

 スッと高い鼻梁、優しそうな表情を印象づけている眉。
 薄い唇は淡く妖しい色気が漂っている。

 一番印象的なのは目だ。睫が長く、黒目がちな瞳。
 他のパーツは大人っぽいのだが、目だけは可愛らしい雰囲気がする。

 私は、この目を知っている。知っているけど……私が知っている相手は女性だ。
 しかし、目の前にいるキレイで中性的な雰囲気を醸し出しているのは男性である。

 同一人物のはずがない。何かの間違いだ。
 いや、もしかしたら……私が知っている彼女と血縁関係という可能性も捨てきれない。

 でも……名前は同じ『友紀』だ。
 偶然で片付けるには、安直すぎるだろうか。

 短い時間にこれだけのことを脳裏に浮かべていた私は、副社長が近づいてきていたことに気がつくのが遅れた。
 ハッと我に返ったときには、あまりの距離の近さに思わず後ずさってしまう。

 そこでようやく重要なことに気がついた。

 私が副社長室に来たのは、新しいボスに挨拶をするためにやってきたのだ。
 それなのに挨拶もせず、ただ目を見開いて突っ立っていてはいけない。
 彼は、今日から私のボスである。
 彼の秘書として、まずはしっかりと挨拶をしなければならないだろう。

 私は、慌てて彼に挨拶をしようと口を開く。

「初めてお目にかかります。副社長の専属秘書をさせていただくことになりました、久保未来と申します」

 よろしくお願いいたします、と腰を曲げて深く頭を下げる。
 ゆっくりと顔を上げると、彼はどこか面白くなさそうな顔付きをしていた。

 だが、彼は口を開こうとはしない。
 ただ、私を見て不機嫌そうに眉を顰めているだけだ。

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