失礼ですが、強い女はお嫌いですか?

王宮のとある部屋



ソメリオ王国の中央近くに位置する王都。国土が国で囲まれいるため、大陸の中心でもある王都は、貿易の拠点となることが多く、大変賑わいのある街だ。

その王都で観光地としても人気なのが、いくつもの城壁に守られた白亜の城。ソメリオ王国の政治の中心で、王の住居でもある王宮では、今日も変わらず皆がせっせと働いている。


「いやぁ、忙しそうですねぇ」


王宮の中でも一等忙しいであろう宰相の側近に与えられた部屋の入り口に寄りかかり、呑気な発言をしている男を、書類に埋もれた状態の部屋の主は遠慮なく睨み付ける。


「そう思うなら手伝え、ケイト」

「いやいや、僕もう二週間は働き詰めで、さっき王都に帰ってきたばかりですよ? 頑張った部下を労って欲しいくらいです」


ニコリと無邪気に笑うケイトの笑顔は、誰もが心を許してしまうような甘さを放つ。だが、それが効かない人間もいるわけでーー


「……俺は一ヶ月、まともに休んでいないがな」


怒りの籠った地を這うような声にもケイトは怯える素振りを見せない。それどころか「働きすぎですよー」と軽い口調で注意してくる始末である。

部屋の主、レオネルはそんな平然としている部下に怒る気力を失ったのか、肩を落とし、机に突っ伏した。
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