翼の折れた鳥たちは
「早速ですが、榎田のリハビリの進捗状況はどうでしょうか?」

応接セットに置かれていたコーヒーを、一口だけ啜った重光先生が表情を曇らせて尋ねる。

「えっと……」

個人情報なのに、言っていいのかな?

そんなことに考えを思いめぐらせて言葉を選んでいると、隣に座った部長が小さく頷く。

言ってもいいぞ、ってことだ。


「普通車いすでの移動は実用レベルに近づいてきました。上肢の筋力も向上してきています。今は車いすへの乗り移りの訓練も始めています」

「そうですか、良かった」

安堵のため息を漏らしながら、ホッとした表情を重光先生が浮かべる。
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