翼の折れた鳥たちは
「バスケ観戦の日、実は私にとって大切なオーディションの日だったんです。だけど、私は敦也くんのバスケ観戦を選びました」
部長が一瞬、息を呑んだような気がした。
「多分、私の中ではそれが答えなんだって、その時感じたんです。歌手ではなくて、理学療法士を続けること。それが私の答えです」
「そっか」
部長はポツリと漏らすように呟いた。
「ありがとう。星原さん」
「えっ?」
どうしてお礼を言われるのか分からずにポカンとした私に部長が少し肩を揺らす。
「世の中の理学療法士を代表して、選んでくれてありがとう」
恥ずかしいな、私に聞こえない位の声で部長は後に続ける。
「こちらこそ、本当にありがとうございます」
暗くて良かった。
きっと私の顔は今誰にも見せられないほどに真っ赤になっていることだろう。