翼の折れた鳥たちは
「いつも夕方になると、ここは屋上からの歌が聞こえてくるんだ」

天使の歌声に聞き入りながら、太田さんが教えてくれる。

♪もしも この未来が不安で真っ暗でも 歩き続ければ きっと 光がみえる

サビの終わりの印象的なフレーズ。

心にじんわりとその言葉が染み入ってくる。
今の俺にピッタリのその歌に、一瞬胸が熱を覚えた。


「これ歌ってる人、誰か知ってるか?」

何か知っているとでもいうような顔して、したたかに笑う太田さんに俺は首を傾げてわからないということを伝える。

「榎田くんの担当の姉ちゃんだよ」


担当の姉ちゃん?

その言葉で数人のスタッフの顔を思い浮かべた。

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