混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
10)ララティナ港
 土地の言葉で、波が静かで穏やかな入江という意味の、ララティナ港は、火山列島の中でも二番目に大きな島だった。ふたつ目、という意味で、ニコロ島という島は、大洋の補給地として栄えている港であり、過ごしやすい南国の気候は、リゾート地としても開けていた。

 補給と、点検の為、ララティナ港には二泊する事になっている。

 その間乗客は、船のキャビンを離れ、ニコロ島のホテルで過ごす事になっていた。

 ララティナ港には、ブルームーン商会の事務所があり、イライザはそちらを通じて、紙類の補給をする腹積もりだった。

「……もし、アレンが一緒じゃ無かったら、このあたりでお父様に待ち伏せされていたかもしれないのね……」

 ララティナ港、港湾役所で手続きを終えて、ブルームーン商会事務所へ向かう道を歩きながらイライザがしみじみ言った。

 『青い不死鳥号』は、巨大で、乗り心地のよい豪華客船ではあったが、船足はそれほど速くは無い。ブルームーン商会の定期船であれば、後から出港したとしても、途中で追い抜く事は可能であり、実際、そうされていたら、ここでイライザは、父の息のかかった者に確保されていたかもしれなかった。

「僕の女装も、甲斐があったって事だね」

 すっかりご令嬢のふりをする事に慣れたアレンであったが、ホテルであれば、部屋に引きこもれると、喜んでいるように言った。
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