混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「わかりました、けれど、あなたの後を着いて行く事はお許し下さい、もちろん、あなたの行動を邪魔するような事はしません」

「とてもありがたい申し出ですが、イザードさんはそれでいいんですか? 処女航海中の船主はご多忙なのでは?」

「幸いにして、有能な部下が万事抜かりなく対応しておりますので」

 ガブリエルの言う、有能な部下というのは、恐らく船内で何度も会った、マイケル・ニュートンの事だろう。

 マイケル・ニュートンの名が出たことで、何かを思いついた様子のアレンは、さっきまでの様子だと、ガブリエルと共に護衛につくと言い出しかねない調子であったものの、イライザと行動を共にする事は辞めた、と、言い出した。

「幸い、イザード氏が護衛を買って出てくれたようだし、僕は僕で別行動させてもらうよ」

 何か考えがある様子のアレンに、イライザは多くを尋ねなかった。

 今のアレンは、慣れ親しんだ従兄弟、兄のような顔では無く、ブルームーン商会社長の片腕を自認する時の顔になっていた。

 アレンにはアレンで、イライザのお守の他にも目的があった。

 それは、イザード造船に関わる事でもある。

 自分の動向を、イザード造船側に悟られないなら、それにこしたことは無いのだ。

 かくして、イライザは地図を手に港街へ出て行った。残された時間は少ない、『転がる子豚亭』の料理が美味である事だけでは、ララティナ港の魅力を伝えるには足りない。

 まずは、港を見下ろす塔へ登ってみるつもりだった。
< 74 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop