ドッペル少年少女~生まれる前の物語~
サン・リヴィンス
「サン様!またお間違えになりましたね?ステップは右足からと教えた筈ですよ!」

「す、すみません。ルーナ先生」

ダンスのレッスンで、サンは教師であるルーナの足を何度も踏んでいた。

「全く。……もういいです。今日はここまでにしましょう。次はピアノです。音楽室に移動してください。わたくしも、準備が出来次第向かいます」

「……はい」

俯きながら頷くサンに、ルーナは重いため息を吐く。

「はぁー。その内気な性格をどうにかしなくては。……それにしても、サク様は何でもお出来になるのに、サン様は……」

「すみません」

謝ることしか出来ないサンに、ルーナはそれ以上は言わず部屋を出るよう促す。

ダンスホールから出ると、溜めていたものを吐き出すように、ため息を吐いた。

(……また、ガッカリさせちゃった……)

自分はどうしてこうなのだろうと思う。何をやっても要領が悪く、どんくさい。

(サクと同じ顔なら、頭の出来も同じだったら良かったのに)

サンとは反対に、サクは何でも出来る。それに愛想も良い。

(……次のレッスン、しなきゃ)

出来るまで沢山練習しなくては。失望されないために、サクに恥ずかしくないように。

サンはドレスの裾をギュッと強く握って、音楽室へと向かった。


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