【冴えない貴方は御曹司!?】番外編も完結しました!

殿と忠臣の微妙な関係

私の母は、旧姓橘(タチバナ)、名を麻衣子(マイコ)と言い、この会社の受付をしていました。

当時の母は、社内外問わず、たくさんの男性からアプローチを受けて、実のところ辟易としていたそうなのです。

けれども、元来の真面目な性格のために、疲れた表情など見せずに、来社する多くの客に眩しすぎる笑顔で接客していた母は、瞬く間に評判となり、用事もないのにわざわざ来社する人もいたと言います。

ある時、母に気のある他社の営業マンにしつこく食事に誘われて、困惑している母の細い腕を掴んで隅の方へ連れて行こうとする事件が起こったそうです。

イヤがる母に無理矢理壁ドンして、逃がさないぞと十数秒間、周りの目など気にもせず、強行突破を図ろうとしたのですが、とうとう泣き出してしまった母に助けが入りました。

それが父だったのですが、実はこの時、もう一人、一緒に助けに入った人物が…。

その人物こそが現在の社長その人だったそうですが、母を壁ドンで拘束する犯人を取り押さえようと、果敢にも最初に向かったのは社長だったのです。

しかし残念なことに、犯人が偶然振り下ろした腕が、社長の頭に当たって、脳しんとうを起こしてその場に倒れ、救急車を呼ぶ事態に発展したようです。

そしてその犯人が我に返った時には、私の父に取り押さえられて、警備員に引き渡されたと言うことですが、それってタナボタじゃんかお父さんと目いっぱい叫びたいと思った私は、おかしいでしょうか?

全然活躍しとらんし、お~い、お母さんたらお父さんのどこが良かったの?顔か…。

失礼しました…私の心の声もお届けしました。
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