君がいなくなったって【短編】
ヒロと同じ高校の制服を着た、ショートカットの女の子。

肩にかけたカバンは、ヒロと同じ陸上部のもの。




………私がいながらって、なに?




なんだかおかしくなって、ふふっと笑う。

会わなくなったのは、そっけなくなったのは。



もう、ヒロの中で私達がとっくに終わってたから?



「急に来てごめんね、ヒロ。
用があったと思ったんだけど、やっぱりなんでもなかったみたい。
ここの公園寝心地いいね。素敵なところ。ふふっ。
じゃ、私帰るね。バイバイ」


訳のわからないことを弾丸のようにぶちまけて、ヒロに背中を向ける。


惨めだ。私、とてつもなくバカだ。


これで良かったんじゃないの?

そうだよ、これで良かったんだよ。

違う、これが良かったんだよ。

だって今日、私はこうするためにここに来たんでしょう?


なのに、ねえ。


なんで、こんなに心臓が痛いの?


バカ、バカ、私のバカヤロウ。


堪え切れない嗚咽を両手で必死に塞ぎ込んで、駅へ走る。


あの子。可愛かった。

私みたいな運動が苦手なへなちょこよりも、ヒロと同じ場所で、同じことを一緒にできる子の方が、きっと。


きっと、ヒロの隣に立って、ヒロを幸せにできる。
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