ドS上司の意外な一面
意外な一面 Wedding狂想曲(ラプソディ)(鎌田目線)
***

「はぁ……」

 俺は何度目かの深いため息をつく。――肌で感じる……君が楽しそうに仕事をこなしていることを。

 以前仕組まれたこととはいえ襲ってきた男と楽しそうに談笑しながら、仕事をする君の神経が分かりません。

 戸籍上は俺の妻ではある。だけど君は誰にでもあどけない笑顔を振りまいて、とても嬉しそうにしていて。そのことにいちいち嫉妬してもしょうがないのは百も承知なれど、無意識にその相手へと向かって、視線を飛ばしてしまう小さな自分。

 じっと小野寺に視線を送ると、胸に手を当ててデスクに突っ伏した。空気が読める男で助かる。

 片側の口角を上げかけた瞬間、勢いよく君が振り向いて可愛らしくあっかんべーをした。驚いてそのまま見つめていると、俺の傍までやって来る。

「仕事中に変なモノ、飛ばさないで下さい」

「変なモノ?」

「レーザービーム砲! 仕事がやりにくくてしょうがないです!」

 ひとりプンスカ怒って、自分の席に戻ってしまった君。俺の想いなんて露知らず――

 書類に視線を戻したが脳裏にはあっかんべーした君の顔が、なかなか離れなかった。
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