拝啓、ファインダー越しの君の世界へ
1.出会いは偶然
パシャ、パシャー
「うっ…、っ」
夕暮れの河川敷でドラマかよと1人ツッコミながらも零れ落ちる涙をスーツの袖で拭っていると、こちらの雰囲気なんて丸潰れにする機械音が響く。
パシャパシャパシャー
音の方をジロッと睨むとカメラのレンズをこちらに向けたまま、あっと声を漏らした。
「あのー、すみません…無断で写真撮っちゃって」
男性はカメラを胸元まで下ろしてペコっと一礼し、
「あっ、でも、ほらこれみて下さい!結構綺麗に撮れたんですよ」
不満気な表情の私に気にも留めない様子で、スタスタとこちらへ近付いてカメラの画面を見せる。
少し驚きながらも言われるがままに画面を覗くと、夕焼け色の横顔のシルエットが写っていた。
「…凄い。でも、これ私じゃなくてもいいじゃない」
グスンと鼻を鳴らして男性見ると、目尻に皺を作って楽しそうに笑って、
「違いますよ、あなただから撮れたんですよ。こことか…ほら」
写真の差す先を見ると、シルエットにキラリと光る粒が流れているのが写っていた。
「これは、あなたじゃないと表現出来なかったものです」
彼氏に振られて憔悴しきっていた私にとってその言葉はとても救われた思いだった。