拝啓、ファインダー越しの君の世界へ

それから私達は何気無い話をしながら最寄駅まで歩きはじめた。

カメラを持った彼は、笹井 香(ささい こう)と言う名前で2歳下の売れない写真家だと言うこと。
私はというと、OLをしている普通の女で最近高校時代から付き合っていた彼氏に振られた事をお互い話した。


「花世(はなよ)さんには、きっといい人が現れますよ。」

夕日が沈み、最寄駅が見えた時に彼が言った。


「少なくとも僕はあなたの事は素敵だと思いましたけど」

サラッと彼の口から出る言葉は、外国人並みの甘い言葉。
そ、そう…?と平然を装いながらもチラリと街灯で照らされる彼の顔を見上げると、あちらも私を見ていた様子でパチリと目が合う。

数秒間、私と彼の間の空気が止まる。


私は自然と彼の方を向き、


「花世さ…っ」



背伸びをして形の良いピンク色の唇から溢れる言葉を塞いでキスをした。


最初は、大きな瞳を開いて固まっていた彼だったが、そっと私の背中に手を回してキスに答える。


その先は、皆さまも想像の域でごくごく自然の流れだった。






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